「松本、ただいま戻りましたぁー」

声を上げて松本が執務室に入ってくる。

「しー。」

途端、ソファーに腰を掛けていたが松本の方に向き直り、自分の唇に指を押し当てる。

「……ん?」

何事か、と、思い近寄っていくと、の膝でスヤスヤと眠っている日番谷の姿があった。





やすらぎの場所





「…あらま。」

口元に手をやりその様子に驚きを表す松本。

「…隊長。眠っちゃったの?」
「…はい。」

しゃがみ込み、視線をに向ける松本に

「…隊長。かなり、疲れているみたいで。」

書類の山に視線をやり、一つ、溜息を吐く。

「……ほかの隊の仕事も引き受けているからね。」

今は。
乱菊も静かにそう、呟く。

「…しかし。……こうやっていると、隊長も外見と相応の表情になるのにねぇ。」

ふと、視線をそちらに向けると、感心したように乱菊が呟いた。

「…乱菊さん。」
「だって、見て御覧なさいよっ!眉間に皺が無いのよ?」

小さな声ではあるがそう言って、乱菊が眠っている日番谷の眉間を指差す。

たしかに、いつも眉間に皺を寄せてはいるが、いくら日番谷でも、
眠っている最中までそんな表情をしているわけは無いと思うのだが……
そんな事を言う乱菊には再び苦笑を浮かべた。

「…ま、こんな表情させられるのは、だけでしょうけど。」
「…え?」

乱菊のそんな言葉に、は視線を日番谷から、乱菊の方へと向ける。

「…なに、驚いてんのよ?」
「…だって。」
「…隊長って、早くにこの地位に着いたでしょ?」
「……はい。」
「だから、気負いってものがあるみたいで、同じ隊の私達でさえ、どこか一線を置いていたのよ。
 そんな一線を、越えていけたのはアンタだけ。
 ……だから、これからも、隊長の傍に居てあげてよね。」

こんな穏やかな顔、久々に見たわ。

そう言って微笑む乱菊に、の頬は赤く染まっていく。

「…さて、隊長もまだ、眠っていることだし?
 私ももう少しサボってくるんで、あと、よろしくぅ〜。」
「ちょ。乱菊さんっ!!」

慌てて呼び止めるが、自分の膝には日番谷の頭。
大きく動くとその日番谷の頭を落としかねない。

そう、思うと派手に動くことも出来ず、その場から声を出すだけで、
その静止の声はむなしく執務室に響き渡っただけだった。

「……乱菊さぁーん。」


目に入ったのは乱菊の机に積まれている書類の山。
片付けないと、結局は日番谷が処理する羽目になる。

この人を、少しでも休ませてあげたいのに……

「……隊長。」

小さな声で、そう呼びかけるが、反応はない。
乱菊が言う通り、今は眉間にも皺が寄っておらず、穏やかに寝息をたてている。

ふと、髪に触れてみる。

柔らかな髪がの手を滑っていく。

乱菊の言うことが本当なら、どれほどうれしいだろう。

自分がそんな存在になれているとしたら……
再び、はそっと、眠っている人物の髪を撫でる。

「……私は本当に隊長に安らぎを与えられる存在、なんですか?」

そう、問いかけてみる。
返事が返ってこないと分かっているからこそ、問える事。



ふと、その手に触れる者がいた。
驚き、視線を戻すと、翡翠の瞳が見上げていた。

「…隊長。」
「……よぉ。」

翡翠の瞳が真っ直ぐに見つめてくる。

ふと、頬に温もりを感じた。

「えっと…隊、長?」

日番谷の行動の意味が分からず、恐る恐る尋ねる。

ふと、視線がからみ合った。



そして、



「……そうだ。」



「…はい?」

日番谷のいきなりの言葉に間抜けな声を上げる
そんなに日番谷は起き上がると、溜息を一つ吐く。

「・・・・・・お前は、俺に安らぎを与えてくれる存在だって、言ってるんだよ。」

・・・・・・聞いたのは、お前だろ?

そう言って、日番谷は、ニヤリ。と片頬を上げる。

「おっ!起きてっ!!」
「・・・俺が松本の霊圧に気付かないとでも、思ってんのか?」

なんだか、やられた気がした。

「・・・・・・だから、お前はそのままでいいからココにいろ。」
「…へ?」

そんな言葉と同時に、いきなりその腕に引き寄せられる。

「……わかったか?」

頭上から聞こえてくるその声音に喜びをかみ締め、
二人の間にあるわずかな隙間を埋めるようにそっと、寄り添い答える。


「…はい。」





引き寄せられたその人からは優しい冬の匂いがした。







「ほにゃらら分室」羽澄 さまへサイト10万HITのお祝いにと
迷惑顧みず、送りつけた初書き日番谷隊長夢です(汗)


……今、読み直してみると、隊長、ほとんど寝てるうえ、
名前一度も呼んでもらえてない。
………夢とは程遠いものですね(汗)


……さま。
いつか、リベンジさせてください。