息が上がっている。
日番谷の様子を見て、は今、自分が感じ取っている事が
事実である事を確信した。
あの男が
黒崎と闘っている。
と、いう事を………
ユキマチ ソウ
「冬獅郎。……辛いなら休んだ方が……。」
苦痛に歪んだ日番谷を見てとったが声を掛ける。
「…そんな場合じゃねぇ事くらい、お前もわかっているだろう?…。」
「………。」
その翡翠の視線には押し黙る。
「…くそっ。」
傷付いた腹部を押さえ、日番谷は小さく呟いた。
「…冬獅郎?」
痛むのか?
そう、聞こうとしただったが、日番谷の様子を見て、その瞳が見開かれた。
「……ダメっ!!」
死覇装の袖を掴み、その動きを止めようとする。
「…?」
いきなり袖をつかまれた事で、日番谷の視線がへと落ちる。
「…ダメ。」
そう言って首を振る。
その必死の視線に日番谷は苦笑が漏れ出た。
「……またもや、お見通し。……か。」
日番谷から視線を逸らさず、何度も首をふり続ける。
「…。」
強く握り締められた、その手にそっと触れる。
「…行かねぇと。」
その日番谷の言葉にもは首をふり続ける。
「…。」
「…行っちゃ、ダメ。」
「。」
少し語尾をきつくし、日番谷が呼びかける。
―――
わかっているだろう。
その思いを込めて。
「…わかってる。…でも、…それでも行っちゃダメ。」
今、まさに黒崎が闘っているのは、日番谷を傷つけたあの男。
ここまで来るともう、間違いない。という思いがある。
王印を奪い、日番谷を傷つけた男。
それが、かつての同期
―――
草冠宗次郎
と、いう確信が。
わかっている。
それでも、今は、そこに行くべきではない。と、本能が訴えている。
行けば、きっと、冬獅郎は今、抱えている思いからずっと逃れられない。
決着が付けられない。
そんな気がしてならなかった。
「私だってわかってる!今、何が起きているか。…それでも行っちゃダメ!」
は更に日番谷の袖を強く握る。
「。」
日番谷が短く、その名を呼んだときだった。
う。と、日番谷が息を詰めた。
それと同時にも、全身に圧迫を感じた。
「……どうして。」
呆然とした呟きが、の口から漏れる。
どうして、この感覚が。
見知った感覚。
この感覚は、今傍にいる日番谷のもののはず。
それが……なぜ。
呟き、日番谷が手にしている斬魄刀に視線を落とす。
「……まさか」
一つの思いがの視線を斬魄刀から日番谷の顔へと上がる。
日番谷と視線があう。
溜息と苦笑。
「……だから、行かねぇと。」
日番谷が、そう言っての手を解こうとしたが、
は更にその掴む手に力を込めた。
「」
溜息と共に落とされる。
手を離せ
日番谷の視線がそう言っていた。
「…こんな状態の冬獅郎を闘いには行かせることはできない。…治療させてくれるっていうなら別だけど。」
そう言っては小さく息を呑んだ。
決着をつけなければいけない事は十分にわかっていたが、
は、日番谷を今は行かせてはいけない気がしてならなかった
だから、これは行かせないための口実。
もし、これで傷を治せ。
と、言われたら、拒否できない。傷はのほうが治したくて仕方がないのだから。
ちらり。と日番谷を見ると、自分が傷つけられた部分をじっと見つめている。
「…治そうか?」
思わずそんな言葉がこぼれ、は思わずその口を手で押さえた。
「…まだ、この傷が治せねぇ事くらい、わかってんだろ?…第一、こうやってる間に終わっちまってるみたいだしな。」
「…あ。」
「…気付いてなかったのかよ。」
お前、霊圧感知に優れてるんだろうが。
そんな呆れたような日番谷の声が返ってきた。
「ほら、行くぞ」
そう言った日番谷の顔色がなお一層、青くなっている事には気付いていた。
―――
時間が、……ない。