二人で行動している今、俺の事を名前で呼ぶ


隊長 ではなく、


――― 冬獅郎。

と………



部下として接するのではなく、同期として接してくれるその心に、
救われている俺がいる。








ユキマチ ソウ









歩くたび、受けた傷がシクシクと痛む。




「傷、痛むんでしょう?」

その声に、視線を隣に移す。
心配そうに俺を見る

「…………。」

表情には出さないよう、注意をしていた。


が、それは『つもり』のようだっただけで………
実際は表情に出ていたらしく、の心配そうな瞳と視線が絡み合った。

「……いや、大丈夫だ。」

これ以上、時間をとられるわけにはいかないと、歩みを止める事無く、の問いかけに答える。

「…………。」
「……?」

ふと、気付くと隣にいたはずのがいない。
振り返ると、先程の場所から、一歩も動く事無く佇んでいる。

「どうした?」
「……き。」

「…は?」

その場に佇み、俯いたまま、何かを呟いたの声がよく聞き取れず、思わず聞き返してしまう。

「うそつき。」

俯いていた顔を上げ、ジト目で俺を見上げる。

「…うそつき。…って、お前な。」
「……あの斬魄刀で刺されて、…そんなに大きな怪我で……大丈夫なわけ、ないじゃない。」
「……っ。」

――― あの斬魄刀。

のその言葉に、思わず息を呑む。

「冬獅郎。気持ちはわかるけど、焦りすぎるのもよくないよ?」

佇んでいた場所から、がゆっくりと、俺の傍まで歩みを進めてくる。

「…焦ってなんかいねぇーよ。」
「また、嘘、言ってる。」

俺の答えに即答し、クスリ。と、苦笑する

「………嘘は言ってねぇ。」
「じゃぁ。その眉間の皺は、なに?」

いつもとは逆の立場。

何かあればいつもひとりで背負い込み、一人で悩む
真っ直ぐ目を見て問いかければ、いつも

なんでもない。

そう言って目を逸らす。


そんなが、今は俺の目を真っ直ぐ見て、尋ねてくる。

「………。」
「いつもよりも眉間の皺、深いんだけど?」

目は逸らす事無く、更なるの問いかけに何も言えなくなっていく。



「……冬獅郎。この場合、焦っても仕方がないのはわかっているよね?」

口を閉ざした俺に、が溜息混じりにそう、語りかけてきた。

「………。」

無言の俺には更に言葉を続ける。

「……そりゃ、奪われた王印は早く取り戻さないといけないのはわかっているけど。
 ……なんとなくだけど、………彼、冬獅郎を待っている気がするの。」

……なぜだか、わからないけど。

そう、呟くに俺はゆっくりと頭を振った。

「…ちげぇよ。」
「え?」
「…アイツは、きっと………。」



きっと、俺を…………

杖代わりにしていた氷輪丸の柄をぎゅっと握り締める。



切り捨てたと思っていた。
あの頃の、あの出来事には蓋をしたと………。





今更ながらに思い知る。
自分の“弱さ”を………



でも、今は
………乗り越えられる。
そう、思える。


お前の存在が。
……俺を支えてくれているから。


ふう。と、一つ息を吐き、ただ、黙って俺の言葉を待っているへ視線を移す。

「…そろそろ、行くぞ。…いつまでもここにいるわけにはいかねぇからな。」
「…うん。」

続きには答えず、そう言った俺にはただゆっくりと頷いてくれた。

そんなに心の底で感謝する。
自分の事を一番、わかってくれている事に。



そして、再び俺たちは歩き出した。

この先、
何が起こるかわからない。



俺たちには追手も掛かっているだろう。
残してきた十番隊は、どうしているのか………
わからない事だらけで、どうなるかはわからない。



でも、


決着が付いて、もし、お前に伝える時間があったなら、


必ず言うから。


――― お前が居てくれてよかった。

と。



それまでは、どうか……
このまま、俺の傍で。



必ず、お前は俺が守ってみせるから。















またもや妄想回です。
一応、シーン的に言いますと、
一人で現世を彷徨い歩いていた隊長のシーンを
ヒロインが一緒だったら…と、妄想させて頂きました。

あの隊長が氷輪丸を杖に彷徨い歩くシーンは……
何度見ても辛かったです(T T)