ゆっくりとの意識が浮上してくる。
その身に感じるのは二つの霊圧。
一つは、誰よりも大切で、愛すべき人。
もう一つは…………。
「…………っ。」
ゆっくりと体を起こすと、体に鈍い痛みが走った。
どうやら、どこかの骨が折れているらしい。
その痛みに耐えながら、霊圧を感じる方へと目を向けた。
「……たい、……ちょう。」
微かな声でそう呟いた。
周りの喧騒でその声が聞こえているはずは無いのだが、
日番谷が、こちらを見た気がした。
その表情に、は息を呑む。
次の瞬間、日番谷が瞬歩で姿を消した。
「隊長っ!」
体が痛みで悲鳴を上げる。
それでも、は追いかけた。
日番谷を。
あんな表情をする彼を、放っておくことなど、出来なかった。
ユキマチ ソウ
「…………。」
ザワザワと下草を踏みしめ、前へと進んでいく。
日番谷が姿を消して、後を追いかけたは即座に掴趾追雀を試みたが、やはりと言うべきか、
既に霊圧を消した後で、日番谷を補足することは出来なかった。
「……一体、何処に。」
空を見上げると分厚い雲に覆われて今にも雪が降り出しそうな気配。
この分だと、日番谷が霊圧を消す事を止めたら、きっと雪が降り出すだろう。
そんな事を思いながらもは先程の日番谷の表情を思い出す。
今まで見たことも無い、
何かを耐えるような、自分を責めるようなあの表情。
その日番谷の表情がの脳裏に焼きついて離れようとしなかった。
「……どうして。」
はそう呟くと、手を強く握り締めた。
――――どうして、
人には溜め込むなと、言っておきながら、自分は……
日番谷は溜め込むのか………。
一人で全てを背負ってしまうのだろう。
何を耐えているのかは、今のにはわからない。
でも、あんな表情を見せた日番谷は、始めてだった。
だからこそ、傍にいなければいけない気がした。
は再びその瞳を閉じた。
微かな霊圧だろうと、絶対に捉えてみせる。
その決意と共に………
手を、その下草にゆっくりと置く。
「……縛道の五十八。………掴趾追雀。」
目を閉じ、一つの霊圧を探す事にのみ、その気を集中させる。
日番谷の霊圧を思い起こし、自分の霊圧をその地脈へと注いでいく。
しばらくして、その手に、何かを感じるものがあった。
その瞳がゆっくりと開かれる。
「………見つけた。」
そう呟くと、は瞬歩でその霊圧の元へと急いだ。